「雇用調整助成金」
先のコラムでもご紹介致しましたが、
4月1日から6月30日まで、助成率を
リーマンショック時の水準とするなど
特例措置が拡大されています。
振り返ってみるに、最後の転職で
製造業の人事部に居た頃は、
リーマンショックの真っ只中
雇用調整・一斉休業などの施策から
雇用調整助成金の申請実務などを担当し
・申請窓口で2時間待ち
・朝7時から助成金センターで行列
・支給申請から振込まで3か月待ち
そんなカオスな現場の状況を
リアルタイムで体験しました。
労働者の"失業の予防"や
"雇用の安定"を図ることを
目的とする雇用調整助成金には
・計画届/支給申請
・平均賃金/基準賃金 など
制度特有の流れ・考え方があります。
今回のコラムは、
雇用調整助成金の用語・
受給までの流れにフォーカス
本助成制度の概要を
最新版の「雇用調整助成金ガイドブック」
から紐解きます。
※以下の資料は、厚生労働省ホームページで
公開されている資料より引用します。
計画届⇒支給申請 雇用調整助成金 申請手続きの流れ
雇用調整助成金の受給手続きは、
・計画届で枠をとって自社の雇用調整施策を実施
計画届の提出 ⇒ 雇用調整(休業等)の実施 ⇒ 支給申請
が1サイクル
「支給対象期間(支給対象期)」ごとに
計画届と支給申請を行うことが
受給手続きの流れです。
※「支給対象期間」とは、休業等を行う場合の
"計画届や支給申請の単位となる一定期間"のこと
この「支給対象期間」は、
・1つの「判定基礎期間」
・連続する2つ、ないしは3つの「判定基礎期間」
いずれかを、事業主が毎回の届出(計画届)ごとに
選択することが可能です。
画像出典:雇用調整助成金ガイドブック(令和2年3月1日現在版)
このように受給手続きは
初回の計画届の提出からスタートしますが
計画届には
「対象期間」と「判定基礎期間」
2つの期間の設定が必要です。
この助成金では、1年の期間内に実施した
休業等の雇用調整について支給対象となります。
「対象期間」とは、
休業等実施計画の始期と終期
休業等の雇用調整施策を
"いつからいつまで実施するか"の計画期間
事業主が始期として指定した日から1年間が
この助成金の対象期間となります。
そして、この助成金では、
"対象期間内の実績"を1ヶ月単位で判定し、
それに基づいて助成金の支給がなされます。
「判定基礎期間」とは、
休業等の実績を判定する1ヶ月単位の期間
原則として、
"毎月の賃金の締め切り日の翌日から、
その次の締め切り日までの期間"を
設定することとなります。
【雇用調整助成金休業等実施計画(変更)届記載例(休業の場合)】
※画像出典:雇用調整助成金ガイドブック(令和2年3月1日現在版)P34
ここまで、計画届の提出 ⇒支給申請
手続きの流れなどをみてきました。
ここからは、書類の流れです。
助成金申請に必要となる書類は、大きく
・本助成金申請に指定された「様式書類」
・申請内容の根拠を裏付ける「確認書類」
に分類され
雇用調整(休業・教育訓練・出向)の対象となった労働者の
・出勤及び雇用調整の状況
・賃金及び休業手当等の支払い状況等を明らかにする書類
(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等)など
過去の実務経験からも
雇用調整助成金の活用をご検討される際には、
予め受給までの流れの全体像を把握したうえで、
・どの申請では、どんな必要書類があるのか
・どう整備し、いつまでに準備しておくか
などを意識しておかれることをお勧め致します。
また「確認書類」については、
提出書類・内容などについて適宜、見直しが行われることがあります。
必ず管轄の労働局・助成金センターで、最新の情報をご確認ください。
以下は、休業のみ(教育訓練なし)実施の場合での
現時点で確認できた主な必要書類です。
※雇用関係助成金には、受給のための「共通要件」が
定められています。下記【出典・引用】でご紹介の
「雇用調整助成金ガイドブック」などでご確認ください。
■ 計画届【計画時に必要な書類】
様式第1号(1):休業等実施計画(変更)届
様式第1号(2):雇用調整実施事業所の事業活動 の状況に関する申出書
様式第1号(4):雇用調整実施事業所の雇用指標 の状況に関する申出書
様式第1号(3):休業・教育訓練計画一覧表
確認書類(1): 休業協定書
① 雇用調整の実施について労働組合等との間で締結した協定書
② 労働者代表の確認のための書類
・労働組合がある場合
「組合員名簿」などの書類
・労働組合がない場合
「労働者代表選任書」「委任状」などの書類
確認書類(2): 事業所の状況に関する書類
① 事業所の概況と中小企業に該当しているか否かの確認のための書類
a.「会社案内パンフレット」・「登記事項証明書」・「法人税確定 申告書」などの書類
(確認事項)
・事業内容と資本金の確認
b.「労働者名簿」・「会社組織図」などの書類
(確認事項)
・常時雇用する労働者人数の確認
② 生産指標の確認のための書類
「月次損益計算書」・「総勘定元帳」・「生産月報」などの書類
(確認事項)
・売上高、生産高又は出荷高の確認
③ 受け入れている派遣労働者の人数の確認のための書類(派遣労働者を受け入れている場合)
「派遣先管理台帳」などの書類
(確認事項)
・受け入れ人数の確認
④ 所定の労働日・労働時間・休日や賃金制度の確認のための書類
事業所ごとの「就業規則」「給与規定」などの書類
(確認事項)
・所定労働日・所定休日・所定労働時間等の確認
・賃金締切日等の 賃金制度の規定の確認
■ 支給申請【支給申請時に必要な書類】
様式第5号(1):支給申請書(休業等)
様式第5号(2):助成額算定書
様式第5号(3):休業・教育訓練実績一覧表及び所定外労働等の実施状況に関する申出書
様式第13号:雇用調整助成金支給申請合意書
共通要領様式第1号:支給要件確認申立書
確認書類(4):労働保険料に関する書類
① 雇用保険料の算定の基礎となった賃金総額の確認のための書類
「労働保険確定保険料申告書」または「労働保険料等算定基礎賃金等の報告」
確認書類(5):労働・休日及び休業・教育訓練の実績に関する書類
① 労働日・休日及び休業・教育訓練の実績の確認のための書類
a.「出勤簿」「タイムカード」などの書類
(必要事項)
各対象労働者の労働日・休日及び休業・教育訓練の実績が
明確に区分され、日ごと又は時間ごとに確認できるものであること
b.「勤務カレンダー」「シフト表」 などの書類
※シフト制、交替制又は変形労働時間制をとっている場合は、a に加えて提出
(必要事項)
各労働者ごとの具体的な労働日・休日や労働時間を当該労働者に対して示したものであること
② 休業手当・賃金及び労働時間の確認のための書類
「賃金台帳」などの書類
(確認する実績)
・休業期間中の休業手当、教育訓練時に支払われた賃金
・休業・教育訓練が行われていなかった時の所定外労働等の時間数とその時間に対応した賃金
(時間外等割増賃金を含む)
(提出書類に求められる要件)
・休業日に支払われた休業手当又は教育訓練受講日に支払われた賃金と、
通常の労働日(時間)に支払われた賃金・手当等とが明確に区分されて表示されていること
・対象労働者の所定外労働等(所定外労働及び休日労働)の時間数が表示されていること
・対象労働者の所定外労働等の時間数に係る賃金(時間外等割増賃)の額が表示されていること
※必要書類には、ほかにも詳細な要件が定められています。
下記【出典・引用】などで最新の情報をご確認ください。
平均賃金額⇒基準賃金額⇒助成額単価 雇用調整助成金 助成額算定の流れ
雇用調整助成金では、申請事業主が助成額を算定し支給申請を行います。
提出書類は「雇用調整助成金助成額算定書」様式第5号(2)
助成額の算定は以下の要領で行います。
1. 平均賃金額の算定
雇用調整助成金での「平均賃金」は
休業手当等の計算に関わる労基法第12条の「平均賃金」とは
◆ 平均賃金額算出に使われる指標
① 前年度1年間に雇用保険料の算定基礎となる賃金総額
② 前年度1年間の1箇月平均の雇用保険被保険者数
事業所の前年度における各月の月末の被保険者数を平均して算定します。
③ 前年度の年間所定労働日数
部署や勤務形態毎に当該所定労働日数が異なる場合は、
その部署等に従事する年度末の労働者数等により
加重平均をした全労働者の平均年間所定労働日数となります。
◆ 平均賃金額の算定
平均賃金額は、上記①〜③の指標を使い
① / (② × ③) の計算式で算出します
※小数点以下切り上げ。
①の賃金総額を
②の前年度1年間の1か月平均雇用保険被保険者数に
③欄の前年度の年間所定労働日数を乗じて得た「人日数」
で除して求めた額。
この額が、雇用調整助成金で言う「平均賃金額」
2. 基準賃金額と1人日当たり助成額単価 ⇒ 支給申請助成額
◆ 基準賃金額
上記で算出した「平均賃金額」に
休業等協定書において定めた「手当等の支払い率」を乗じて求めた額
◆ 1人日当たり助成額単価
報道・リーフレット等で目にする「助成率」は、
上記「基準賃金額」に、
申請事業主の「適用助成率」を乗じた額が
「1人日当たり助成額単価」となります。
【特例措置の助成率】
・緊急対応期間拡大措置:4/5(中小) 2/3(大企業)
※解雇等を行わない場合:9/10(中小) 3/4(大企業)
この助成額単価が「雇用保険の基本手当日額の最高額」を超えたときは、
「基本手当日額の最高額」が「当該申請事業主の助成額単価」となります。
令和2年3月1日時点で基本手当日額の最高額は8,330円
言い換えると、8,330円がこの助成額単価の"上限値"です。
つまり、
・自社の平均賃金額×手当等の支払い率(基準賃金額)
▽
・基準賃金額×適用助成率(1人日当たり助成額単価)
仮に、このプロセスで算出された単価が10,000円となったとしても、
支給申請の助成額単価は8,330円まで。
差分の1,670円は、支給申請助成額の
算定から除外されることはご留意ください。
雇用保険料の算定基礎となる賃金総額から助成額単価を計算し
基本手当日額の最高額を上限とする辺りに
この助成金が目的とするところの本質も垣間見えますが
以上の算出プロセスで確定した「1人日当たり助成額単価」に、
助成対象となる「月間休業等延日数」を乗じた額が
最終的な「支給申請助成額」となります。
【雇用調整助成金(休業等)支給申請書記載例(休業の場合)】
※画像出典:雇用調整助成金ガイドブック(令和2年3月1日現在版)P41
※必要書類には、ほかにも詳細な要件が定められています。
下記【出典・引用】でご紹介の「雇用調整助成金ガイドブック」など
厚生労働省ホームページで最新の情報をご確認ください。
※4月13日現在 特例措置を反映した
「雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)令和2年4月13日現在」が
※4月29日 コンテンツ情報更新
「雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)令和2年4月24日現在」が
【出典・引用】
厚生労働省ホームページ 雇用調整助成金ページ
▽
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
雇用調整助成金ガイドブック(令和2年3月1日現在版)
▽
https://www.mhlw.go.jp/content/000611773.pdf
「雇用の安定のために」(詳細版(抜粋))
▽
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/dl/koyouantei_01.pdf
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う 雇用調整助成金の特例措置に関するQ&A
▽
https://www.mhlw.go.jp/content/000606556.pdf
雇用関係助成金共通の要件
▽
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00018.html
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