なぜ
「未経験OK!」
「経験は問いません」
「未経験スタート多数」
な求人コピーが流行っているのか?
人手不足・採用難のいま、
経験者だけだと応募が集まりにくい
▽
求人企業の思惑
「まずは、応募してもらい、
採用する・しないは面接で判断できる」
▽
そのために求人票で
・応募の間口を拡げたい
・たった一言で表現できる
・どんな業種・職種にも当てはめやすい
便利で汎用性のあるフレーズとして多用
こんなストーリーが推測できます。
反面、読み手である求職者からは
・「未経験OK」だけで仕事内容があいまい
→ とにかく誰でもいいから人手が欲しいだけかも?
・「未経験OK」なのに給与や勤務条件がかなり厳しい
→ 実はきつい仕事を厳しい条件で任せたいだけでは?
などとネガティブなイメージで捉えられることもあります。
つまり「未経験OK!」は
それ単独で強い訴求力を持つコピーというより、
まず求人票を開いてもらうための
"求人票の入り口"として機能するコピーと言えそうです。
■実は微妙にちがう「未経験〇〇」・「経験者〇〇」な求人コピー
「未経験〇〇」だけではなく、
その対極にある「経験者〇〇」も
使いやすく便利なコピーで
いくつかのバリエーションもあります。
この「〇〇」の部分にフォーカスして
分類・整理してみると、微妙なニュアンスや
機能の違いが見えてきます
◆「〇〇OK」:この求人での“許容ライン”の宣言
・「〇〇でも構いません」「NGではありません」というニュアンス
・ 条件面のハードルを下げて、応募の間口を広げるフレーズ
◆「〇〇不問」:の求人での“選考ルール”の宣言
・「この条件は、選考や採否には影響させません」というニュアンス
・ 本来マイナスにとられがちな要素を、評価対象から外すフレーズ
◆「〇〇歓迎」:この求人での“優先ターゲット”の宣言
・「特に来てほしいのは〇〇の人です」というニュアンス
・感情としてのラブコールで、「あなたが主役です」と伝えるフレーズ
◆「〇〇優遇」:この求人での“待遇ルール”の宣言
・「〇〇なら、給与や役職などで有利に扱います」というニュアンス
・「どう優遇するか」の補足があれば、強く機能するフレーズ
◆「〇〇尚良」:この求人での“加点ポイント(やや強め)”の宣言
・「必須ではないが、あれば評価を上乗せしたい条件です」というニュアンス
・未経験メイン採用の中で、「あれば頼もしい経験」を示すフレーズ
◆「〇〇尚可」:この求人での“控えめな加点ポイント”の宣言
・「なくても問題ないが、あればなお望ましい条件です」というニュアンス
・採否を左右はしないが、あると嬉しい“おまけ条件”を示すフレーズ
さらにこのフレーズを「経験者〇〇」で使った場合
「経験者」からみた感情の動きは、こうまとめることができます。
•経験者 OK:歓迎まではされていないが「門前払いではなさそう」
•経験者 不問:その経験がなくても不利にはならないが、「経験の価値」も特に示されていない
•経験者 歓迎:自分が“ど真ん中ターゲット”として想定されている感じ
•経験者 優遇:条件面でのメリットはありそうだが、補足がないとかえって不安
•経験者 尚良:未経験者がベースで、自分は「来てくれたらプラス」な位置づけ
•経験者 尚可:「あったらいい」程度なので、面接で経験は強い武器にはしづらい
たとえば、
「未経験歓迎・経験者優遇」を組み合わせると
経験者によっては
•未経験でもいいくらいの仕事なのか?
•本当にスキルを評価して"優遇"してくれるのか不安
•待遇は据え置きで、責任だけ増えそう
といったネガティブなイメージで受け取られることもあります。
便利なようでいて、混ぜ方ひとつで求人企業と求職者の認識ギャップが生まれる。
実は“取り扱い注意”な求人コピーであることも見えてきました。
ここで注目したいのは「歓迎」というフレーズ
「歓迎」だけは、単なる条件提示ではなく、
「ぜひ来てほしい」・「あなたに会いたい」
という企業側の感情や期待を求職者に伝えやすい特性がうかがえます。
■ 求人企業が望む「人材像」と「未経験者」の距離感 ※求人専門家派遣の現場から
ここからは、実際に求人票コンサルティングの現場でのあったお話です。
「未経験者歓迎と書いているのに応募が来ない・・・」
そんなご相談を受けたので、こんな質問を投げかけてみました。
「御社の欲しい"未経験者"はどんなイメージでしょうか?」
すると、このようなお話を頂きました。
※下記はヒアリング内容のまとめです。
◆介護経験の有無について
・未経験者とは「介護の未経験者」のこと
・介護の専門知識は入社後に全部教えることができる
・だから、介護経験はなくてもよい
◆未経験でも「これは外せない」こと
・何もかも未経験という意味ではない
・介護の仕事は、ご利用者様やご家族様とのコミュニケーションがとても大事
・目の前のご利用者様の
話を聴ける、意向をくみ取れる、ちょっとした変化に気付ける
そんな感性が備わっていないと続かない仕事
そこで「どんな仕事をしてきた人・業界経験のある人ならイメージが近いか?」を
テーマにフリーセッションを進めてみると、このような人材像が浮かび上がってきました。
◆コミュニケーションが日常な仕事なら
・飲食店のホールスタッフ ・小売業の店舗スタッフ ・アパレル業界の販売スタッフ
◆ホスピタリティが求められる仕事なら
・ホテル、宿泊業の経験者
◆「お客様の話を聴く」ことから始まる仕事なら
・不動産業界のフロント ・金融機関の窓口担当 ・ウエディング業界
・ネイルサロンなどのスタッフ
そんな職種や業界の名前と働くイメージが次々に挙がってきました。
つまり、その相談者が求めていたのは
単なる「未経験者」ではなく、
介護経験はなくても、
コミュニケーション力やホスピタリティマインド、
あるいは相手の話を聴くことが重要な仕事経験を持つ人。
言い換えると
「特定の職務経験や素養のある"介護業界未経験者"」だったのです。
企業が思い描く「未経験者」の人材像と、
「未経験者OK」で求職者が受け取る人材像との距離感の違い
この辺りに「未経験だけど、即戦力候補」を採用するヒントがありそうです。
「未経験者OK」その入り口に興味を持って
求人票にチェックインしてきた求職者の中に
自社にマッチする即戦力候補が眠っている可能性がありながらも
「未経験OK」だけしか書かれていない
"求める人材像の解像度が低い"求人票を見て、
自分には関係ない求人と思いスルーしている可能性もある
それは勿体ない話です。
みなさんはお気づきになられたでしょうか?
先ほどふれた「OK」・「不問」から「尚良」・「尚可」のまとめで
「歓迎」だけは“優先ターゲット”の宣言なフレーズであることを。
◆「〇〇歓迎」:この求人での“優先ターゲット”の宣言
・「特に来てほしいのは〇〇の人です」というニュアンス
・感情としてのラブコールで、「あなたが主役です」と伝えるフレーズ
このフレーズを活用して、
企業が即戦力として期待したい経験や素養を、伝えることで、
求職者は
・「この経験がある自分は、この求人のど真ん中かもしれない」
・「この会社は自分を求めているのかもしれない」
と一気に腹落ちしやすくなります。
求職者を応募に向けてマインドセットさせるには
求人票の内容に感情が動き「自分事化」してもらうことが
重要です。
"自分事化"に活きてくるのは解像度の高い人材像の提示
「当社はこんな業界・こんな仕事経験のある人を"歓迎"します」に
ヒットするところがある人には
「私の出番が来た」・「私を呼んでいる」な感覚になるはずです。
「売り手市場」の今、仕事を探している人は
「未経験OK」の求人を片っ端から応募しているはずもなく
「自分を必要としている・ラブコールをしてくれる求人」に
心が動くのは自然な流れと言えます。
求人票の役割は、応募の間口を拡げることではなく
その間口から、求職者に自社が求める人材との接点を見出してもらい
「応募してみたい」心象を形成してもらうためのものです。
■「縦のライン」で設計する求人票 即戦力候補の応募動線
ここまで見てきたように、
「未経験OK!」は
求人票の入り口として機能しやすいコピーです。
しかし、その入り口があるがために
みなさんが求めている
「業界未経験だけど即戦力候補」に
届いていないことはありませんでしたか?
私はこれまでの永きにわたり、
各所の「求人票の書き方セミナー」や
本連載コラムで
「だれに・なにを・どう伝えるか」の
重要性をお話してきました。
今回のテーマも、本質はまったく同じです。
「だれに・なにを・どう伝えるか?」
これは「未経験OK」をどう書くか、
という書き方の話ではありません。
なぜなら
こちらも永らくお伝えしてきたように
「求人票も広告」だからです。
求人票は、たった一言の
気の利いたキャッチコピーだけで
成立しているものではありません。
広告も同じです。
・キャッチコピーだけで人は動かず、
・リードコピーで読む理由が生まれ、
・ボディコピーで内容を理解し、
最後にアクションへつながっていきます。
キャッチコピーもリードコピーも
そして、ボディコピーも
それぞれに役割と機能があるように
求人票の「仕事内容」欄もまた、
同じ構造を持っています。
「未経験OK!」を入り口としたなら
そこから、
・どんな仕事内容なのか?
・どんな人を歓迎するのか?
・どんな経験が活かせるのか?
・入社後にどう育てるのか?
「だれに・なにを・どう伝えるか?」を
求職者の心理・感情の変化を先読みしながら
“縦のライン”を連携させ機能させることで、
「応募への動線」が出来上がります。
この設計が抜け落ちると、
どれだけ入口を広げても、
求職者の中で「自分ごと化」が起きません。
求人コピーの一つひとつの評価は
「この木は何に使えるか?」という
見方になります。
しかし、木だけを見ていると
全体の構造(森)が
見えなくなることがあります。
そんな視点で求人票を俯瞰してみると、
「ワンフレーズの解像度」だけではない
これまで見えていなかった
「求人票全体の解像度」や
「立体的な応募への動線」が
見えてきませんか?