■せっかく採用したのに、なぜ早期離職してしまうのか?
早期離職の原因・きっかけは?
ともすると、
「よくわからなかったけど仕方ない……」
「そういうタイプの人だったから……」
そんな失望やあきらめで片づけてしまいがちです。
しかし、少し視点を変えてその事象を俯瞰すると
ひょっとして、早期離職する人は、
応募時点で入社前に持っていたイメージと、
実際の職場との“ズレ”から起きているのでは?
そう捉えてみると"採用面接でできること"も見えてきます。
■「定着」は能力・スキルで決まるのか?
私自身、これまで5回の転職を経験し、
数多くの採用面接を受けてきました。
振り返ってみると、採用面接での
質問は経験や能力に関することを中心に
・自己PR、職務経歴のプレゼン
・長所・短所(自分の性格分析)
・ストレス耐性(強いタイプですか?)
概ねこんな感じだったように思います。
この経験を踏まえ、
昨今の早期離職の課題を見つめ直すと
ふとこんな疑問が浮かびました。
「この応募者は、永く勤めてくれる人か?」は、
どう判断していたんだろう・・・
それは、私が受けてきたような従来の
“能力評価中心”な面接で見抜けるものなのでしょうか。
このコラムをお読みのみなさんは、どう感じますか?
■「定着できそうか?」を面接で観る新しい着眼点「適合力」
対話を重ねる中で見えてきたのが「適合力」という視座です。
似た言葉に「適応力」がありますが、少しばかりニュアンスが違います。
「適応力」は、その場に合わせていける力。
場合によっては、無理をして演じたり、表面だけ合わせたりすることにもつながります。
もしそんな状態が続けば、ある日突然、限界を超えて退職につながることもあるでしょう。
一方、「適合」は、職場や人間関係に馴染み、
違和感があっても対話しながら働き続けられる力。
つまり、適応のような「うまく合わせる力」ではなく、
「噛み合いながら働き続ける力」に近いものといえます。
採用面接にこの「適合力」という着眼点・要素を加えることで、
“定着できそうな人材”を見極めるヒントが見えてきました。
■採用面接で「適合力」を見抜く4つの視点
求人・採用での「適合力」を
「問題が起きても、人との関係を切らず、対話しながら働き続ける力」とした場合、
以下のような4つの視点と質問の切り口・観察のポイントなど
新しい面接のアイデア・ヒントが浮かび上がってきます。
視点1:それでもコミュニケーションをあきらめないか?
仕事では、意見の違いや行き違いは避けられません。
その時に、関係を切らずコミュニケーションを続けられるか。
例えば、
「仕事で認識のズレが起きた時、どう対応しましたか?」
「苦手なタイプの人と関わった経験はありますか?」
といった質問から、相手との向き合い方が見えてきます。
“正しい答え”よりも、
"どんな姿勢でコミュニケーションを取ってきたか"を
観察することがポイントです。
視点2:自分の理想と現実のズレ/ギャップを受け止められるか?
理想と現実のギャップはどの職場にもあります。
「入社前後でギャップを感じた経験はありますか?」
「想定外の業務にどう向き合いましたか?」
そんな質問から、現実との折り合いの付け方が見えてきます。
不満を抱えた時に、環境を一方的に否定するのか。
それとも、自分なりに工夫や調整を試みるのか。
そこには、応募者の“働き続ける力”が反映されるはずです。
視点3:自分の感情を抱え込みすぎないか?
職場では、ストレスや感情の揺れをゼロにはできません。
「仕事で落ち込んだ時、どう切り替えていますか?」
「強いストレスを感じた時、誰かに相談するタイプですか?」
感情の扱い方には、その人の働き方のクセが出ます。
抱え込みやすいのか。
言語化できるのか。
周囲と共有できるのか。
回答内容だけでなく、
“話し方”そのものも観察ポイントになります。
視点4:職場で気まずくなった関係を戻そうとできるか?
どんな職場でも、人間関係の摩擦/軋轢/衝突は起こります。
重要なのは「ぶつからない人」ではなく、
関係を修復できる人かどうかです。
例えば、
「人間関係で気まずくなった経験はありますか?」
「その後、どう関係を戻しましたか?」
そんな問いから、その人の関係構築力が見えてきます。
逃げる・切るだけではなく、
“戻る/戻そうとする働きかけ"ができるか。
そこは、定着に大きく関わる部分かもしれません。
■実は面接は「評価」の前に「観察」ではないのか?
採用面接というと、
「評価する場」というイメージが強いかもしれません。
しかし本来、評価や判断は、
“理解の素材を集めた後”に
行うものではないでしょうか。
応募者がこれまで、
・どんな働き方をしてきたのか
・どんな場面で悩み、どう行動してきたのか
・うちの会社で、どんな働き方をしてくれそうか
それを、面接の質問/応答を通して理解していく。
採用面接は、そんな「人間観察」の場でもあります。
ここでいう「観察」は”応募者のアラ探し”ではありません。
質問を通して、目の前の応募者の
“人となり”にフォーカスし
解像度を上げていくことです。
「キャリア」という言葉には
「轍(わだち)」という意味があります。
目の前の応募者が、
どんな道を歩み・日常で何を感じ・どう行動してきたのか。
その“轍”を探ることは、
その人の価値観や働き方を理解することにもつながります。
働くということは、多かれ少なかれ
人と関わり続けること。
だからこそ、
・行き違い
・感情の揺れ
・理想と現実のズレ
・人間関係の摩擦
は、どんな職場でも起こります。
その時に、すぐ関係を切ってしまうのか。
それとも、対話や調整をあきらめず、
粘り強く関わりを続けようとするのか。
その違いが
「定着できる人」・「永く働ける人」に
つながっているのかもしれません。
面接ではその解像度を上げた上で、
・自社の職場に馴染めそうか
・自社のメンバーとうまく噛み合いそうか
・一緒に仕事ができそうか
などを自社の基準で判断していけば
よいのではないでしょうか。
■「結局、求人も面接も"解像度”次第なんだ」という結論
私は「求人票の書き方・採用面接セミナー」の
結びに「面接は、聴いてみなければ、わからない」
とお伝えしています。
これは、
人材紹介会社のキャリアコンサルタントや
企業の採用担当者として
転職希望者や応募者と面接をしてきた中で
体験してきた実感でもあります。
実はこれ、前篇でお伝えした、
「伝えなければ、伝わらない」
という求人票の書き方に対する視座と、
一対をなすものです。
2026年の「求人票の書き方セミナー」では、
“求人票の解像度”をテーマの一つとして扱いますが
それは採用面接でも同じです。
採用面接は、能力評価だけの場ではありません。
質問を通して、目の前の応募者の
「“人となり”の解像度」を上げる場でもあります。
そして、その解像度が上がるほど、
「この人は自社に噛み合いそうか?」
の判断精度も高まります。
早期離職のリスクを減らすことは、
結果として、中小企業の採用ストレスや
採用コストの削減にもつながるはずです。
ちなみに、今回ご紹介した質問例は、
あえて“余白”を設けています。
そのまま使うテンプレではなく、
みなさまの会社の社風や職場環境に合わせた
アレンジやカスタマイズをご検討ください。